スポーツ選手が負けたときによく使う言葉に、「反省」と「切り替え」がある。
カープが失速したとき、新聞やネットに載った監督・選手の談話は、この2語のオンパレード。
「しっかり反省して、また切り替えて、明日の試合に臨みたい」
いつもいつも、同じ談話でした。
スポーツで勝ち続けるためには、「反省」と「切り替え」が必 要だ。
野球、サッカー、ラグビーといった団体競技だけでなく、
テニス、卓球、柔道、陸上など個人競技においてもそう。
ところが、話はそんなに簡単でない。その反省の中身、これが問題になるのだ。
「反省」を、「結果が悪くなった原因を整理し、対 処 法を考え、どう修正するか明 確にする作業」
と定義すると、原因を正 確に分析することが大 前 提として重要になる。
「そんなこと、分かってます」と言われそうだが、これがなかなか難しい。
よくあるのが、気 持ちや意識の分析に留まっている、というケース。
例えば、ピッチャーが「ボール先行が多かったことを反省したい」と言ったとしても、
原因の分析が表 面 的だと、同じことの繰り返しになる。
以前、愛 知 県のスポーツ医・科学研 究 所で、選手のパフォーマンスを科学的に向上させる、
というプロジェクトに参加していたときのこと。
「気 持ちの問題ではない。身 体の使い方に根 本 的な問題が見つかった」というように、
思わぬ原因が発見されることがよくあった。
伸び悩んでいる実業団の野球のピッチャーの分析で実 際にあったのは、
【原 因】 ストライクを入れようと思いすぎ、肘にムダな力が入っていた。
【対 処 法】 ①入れようと強く思い過ぎない。②肘の力を抜き柔らかく動かす。
【修 正 点】 肘に入るムダな力を抜くために、テイクバックの時 点で肘と首の力を同 時に抜く。
このように、心 身 相 関と言う観点から選手を分析し、原因を明 確にすることができれば、
成績向上に直結する修 正 点が導き出される。
ただし、修 正 点が1つとは限らない。
2つも3つも出て来たり、その選手の修 正 能 力を超えていることもあるので、
修 正 点が出てきたときはその都 度「重 要 度」を付けて提 示し、
場 合によっては修正が行える状態にするための「基 本 的課題」に取り組ませることもある。
なんか、複雑な作業でしょ・・・?
でも、名コーチ、名監督と呼ばれる人の中には、これを簡単にやってのける人もいる。
大リーグではこうした分析をする際に、科学者(アナリスト)が加わることもあるという。
勝つために経験や勘と科学を融合させる・・・カープも本 格 的に始めたらどうですかね。
お金はかかるけど。
さて次は「切り替え」。これは、プロの選手が度々使う言葉ではない。
ミスをしたらいちいち切り替えなければ良いプレーができないようでは、レベルが低い。
ここ一 番というときに、大きな力は発揮できない。
また、試 合 中は途切れることなくプレーを続けなくてならないので、
切り替えをわずか数秒で行えるようになっておく必 要がある。
こう言うと、「なに言ってんの・・・」と煙たがられることがあるが、
この考えを押し付けるつもりはない。
私はチームプレーが苦手で、個人競技ばかりやってきたからそう言えるのであって、
簡単に「切り替え」ができない場面が団体競技には多い、と実 際感じる。
高校野球が、とくにそう。
1つの凡プレーがチーム全 体に伝播したり、完ぺきに抑えていたのに突 然崩れたり、
失敗を引きずっているな・・・と感じることがよくある。
ではどうすればよいか。 「えっ?」 と思われるかも知れないが、
「反省しない」という考え方も、取り入れてみたらどうだろう。
もちろん、全然するなと言うのではない。「反省に時 間をかけない」と言い換えておこう。
もし反省をしなかったら、
「ありゃ、打たれた。ま、そんなこともある。知ったこっちゃない・・・」という感じで、
落ち込みがないので切り替えという行為自体が不要になる。言い訳を捜すこともなくなる。
どうしても反省したいなら、適 当なところでやめよう。
そして、勝因分析のほうをみっちり行ったほうがよい。
しかし、この勝因を分析するということ。意外と行われていないのではないか?
これはテニスで何 度も経験したことなのだが、
本 人が無 意 識にやっていることが好結果を生み、成功の要因を本 人が全く自覚していない・・・
こういうケースに非 常に多く出くわすのだ。
これは、スポーツ場面に限らない。
仕事でも、会議でも、日常の生活でも、ひきこもり対策でもそうだ。
反省会はよく行われるけど、「うまくいかなかったのがたまたま、運が悪かっただけ」
そんなときに、反省に時 間をかけるのは非生 産的な行為だ。
うまく行ったら「勝因」を細かく分析する。
そこに感覚的要素があったとしても、誰にでもわかるように言語化し、
互いに伝え合うことに時 間を取る。
カープが来年同じことを繰り返さないようにするためのヒントは、
こんなところに隠されているような気がする。
BクラスとAクラスの差なんて、紙一重なんだからね。