「自由（じゆう）で、緩くて、グレーな空間」

日本（にほん）テニス学会（がっかい）という、選手（せんしゅ）・指 導 者（しどうしゃ）・研究（けんきゅう）者（しゃ）が一堂に会する学会（がっかい）があります。

「現場（げんば）で役立（やくた）つ研究（けんきゅう）を進（すす）めよう」という掛（か）け声のもと、34年前（ねんまえ）に設立（せつりつ）されましたが、

この学会（がっかい）で発表（はっぴょう）された研究（けんきゅう）が、選手（せんしゅ）の競技（きょうぎ）力向上（こうじょう）に貢献（こうけん）してきたのかどうか?

 

研 究 者（けんきゅうしゃ）、指 導 者（しどうしゃ）として創設にも関（かか）わり、第（だい）1回（かい）大会（たいかい）から参加（さんか）してきた私（わたし）の見解（けんかい）は、

次（つぎ）の通（とお）りです。

選手（せんしゅ）の競技（きょうぎ）力（ちから）を『 体力（たいりょく） + 技術（ぎじゅつ） + 精神（せいしん）力 』と捉（とら）えるならば、

体力（たいりょく）面については90点、技術（ぎじゅつ）面については50点、精 神 面（せいしんめん）については20点。

 

この点（てん）数だけ見（み）ると、「なんだ、あまり役（やく）に立ってないじゃないか?」

「精神（せいしん）や心（こころ）についての研究（けんきゅう）はどうなっているの?」と感（かん）じられるかも知（し）れませんが、

これが現実です。

 

実際（じっさい）、「選手（せんしゅ）が落（お）ち込（こ）んだときには、こう対応（たいおう）すればよい」、

「ひきこもりの人（ひと）に対（たい）しては、こうすればよい」というような、

いま、多（おお）くの日 本 人（にほんじん）が切実に求（もと）めている問題（もんだい）に対（たい）する解答は、

テニス学会（がっかい）に限らず、他（ほか）のスポーツ関連（かんれん）の学会（がっかい）でも提 示（ていじ）されていません。

 

でも、研 究 者（けんきゅうしゃ）を責めてはいけないんですね。

その元凶は文部（もんぶ）科学（かがく）省・・・そう、文科省がいけないのです!!

 

文科省はこの30年（ねん）間、大学（だいがく）に競争原理（げんり）を導入（どうにゅう）し、管理（かんり）の強化（きょうか）を進（すす）めてきました。

その結果（けっか）、どうなったか? 教員（きょういん）の余分な仕事（こと）が増（ふ）えただけで、

研究（けんきゅう）・教育（きょういく）に費やす時間（じかん）が、大幅に減（へ）ってしまったのです。

 

一方（いっぽう）で、短期間（きかん）で成果が出（で）る研究（けんきゅう）にしか予算を出さない。

あ～あ、こんな状態（じょうたい）では、調査（ちょうさ）に長（なが）い期間（きかん）を必要（ひつよう）とする精 神 面（せいしんめん）についての研究（けんきゅう）が、

捗るはずがありません。

そしてさらには、クラブ活動（かつどう）に参加（さんか）する学生（がくせい）も激減（げきげん）してしまいました。

 

文科省さん・・・

大学（だいがく）というところは本来（ほんらい）、自由（じゆう）で、緩くて、グレーな空間であるべきじゃないんですか?

 

幸（さいわ）いなことに私（わたし）は、大 学 生（だいがくせい）活を「緩い隙間（すきま）」の中（なか）で送（おく）ることができました。

いまから40年（ねん）以上（いじょう）前の話です。

出欠を取（と）る講義はほとんどなかったし、教員（きょういん）は教員（きょういん）で質問（しつもん）をしてもちゃんと答（こた）えてくれない。

でも、自分（じぶん）で問題（もんだい）を見（み）つけ出（だ）し、自分（じぶん）でやりたいことを決（き）めて行（おこな）った、という点（てん）では、

自分（じぶん）の長所（ちょうしょ）を自分（じぶん）で伸（の）ばすことができた、貴重（きちょう）な期間（きかん）でした。

 

長年、スポーツ選手（せんしゅ）の指導（しどう）をしていたので良（よ）く分（わ）かるのですが、

人間（にんげん）は管理（かんり）主義の中（なか）では、長所（ちょうしょ）を伸（の）ばせたとしても、中途半端に終（お）わってしまうものです。

100点満点で60点未満（みまん）(落第点)を取（と）ることはなくても、

満点はどうやっても取（と）れない、という感（かん）じです。

 

しかし、自由（じゆう）放任を基礎（きそ）とする指導（しどう）だと、0点になる怖れはありますが、

120点(予想を超（こ）える結果（けっか）)を取（と）る可 能 性（かのうせい）が出（で）て来（き）ます。

(あれっ、先月（せんげつ）のコラムとまた同（おな）じ文章（ぶんしょう）書（か）いてない?)

そして、ちょっと変（か）わった奴（やつ）の方（ほう）が、いざという時（とき）に100点以上（いじょう）を出（だ）すのです。

 

もし、あなたが「こんな自分（じぶん）、変（へん）なんじゃない?」と、落（お）ち込（こ）みそうになったとき、

「確（たし）かに変よね。でも別にいいじゃん。それは逆（ぎゃく）に長所（ちょうしょ）かもよ」と、

真反対（はんたい）に考（かんが）えてみたらどうでしょう?

 

そして、敢（あ）えて断言します。「人間（にんげん）の欠点は治りません」。

だから私（わたし）は、選手（せんしゅ）に対（たい）して練習（れんしゅう）中（なか）、欠点を直（なお）す指導（しどう）は一切しません。

長所（ちょうしょ）を伸（の）ばす指導（しどう）だけ、延々と繰（く）り返（かえ）します。

 

でも、これで、だいたい上 手（うま）くいきます。

多（おお）くの選手（せんしゅ）が、その人（ひと）の持（も）つ最 大 限（さいだいげん）の力（ちから）を発揮（はっき）してくれるようになって行（い）くのです。

それも、ここ一番（いちばん）という場面（めん）で。

 

ひと昔前のCarpの選手（せんしゅ）たちが、こんな感（かん）じでしたね。

スカウトは欠点を見ず、長所（ちょうしょ）のみを評価（ひょうか）して選手（せんしゅ）を発掘していたので、

問題（もんだい）児が入団（にゅうだん）することもあったようです。

たとえば、～～～～選手（せんしゅ）、～～～～選手（せんしゅ）(・・・やっぱり名前（なまえ）は伏せます)。

そして、コーチはコーチで選手（せんしゅ）の長所（ちょうしょ）をより伸（の）ばすことに、力（ちから）を注（そそ）いでいたのです。

 

いま、そういう「欠点に目をつぶる」指導（しどう）をしている球団（きゅうだん）は、

う～ん、『セ』ではちょっと見当たりませんね。

『パ』はありますよ。西武とかオリックスとか・・・

 

新井さ～～ん! こんな、「ざっくばらんだけど強（つよ）い」という雰囲気（ふんいき）・・・

自由（じゆう）で、緩くて、グレーだけど、ぶち強（つよ）いという、ぞくぞくする雰囲気（ふんいき）。

これを、Carpに復活（ふっかつ）させてくれませんか～～?