皆さんは知っていますか? 8050問題。
80(はちまる)50(ごーまる)というのは年齢のことで、
高 齢 者が中 高 年のひきこもりを抱えるようになった、という社会問題を指します。
さて、この8050問題もそうですが、
ひきこもりに関する書籍や論文が、ここ10年位の間に増えるようになりました。
そこで今回は、最近読んだ5冊の書籍について、考えたことをまとめておきます。
★8050問題 (黒川祥子、集 英 社、2019年)
ひきこもりの原因には、精神疾患、発達障害、社 会 的要因の3つがある。
その解決のためには、その人に宿る力を信じて待つしかない、というのが結論。
★ひきこもり救出マニュアル実 践 編 (斎藤環、ちくま文庫、2014年)
解決のための対応は型通りにはいかない。もともと答えが無い、という言い方もしている。
「基本は受容」というのが、精 神 科 医としての著者の主張。
★小説8050 (林真理子、新 潮 社、2021年)
さすが、林真理子! 子どもと一緒に戦ってください。子どもを信じ、お前を守ってやれるのは世 界 中でお父さんとお母さんだけなんだ、と言い続けて下さい。簡単に解決出来ることではありません・・・というような、感 動 的な内容に仕上がっています。
★子どもを殺してくださいという親たち (押川剛、新潮文庫、2015年)
精 神 科 医 療の現場での問 題 点は理解できるのですが、
結局は危険な場合は精 神 科病院へ、という話。
★心に狂いが生じるとき (岩波明、新潮文庫、2015年)
その人の気持ちに寄り添い、心を開き、その苦しみを共に感じる・・・
生き抜くために、どう心を尽くして行けば良いのかを論じた、精 神 医 療最前線で活躍する医師の実態報告。
結局どの本も「解決のためには無理をしてはいけない」、「時が来るのを待つ」と主張しているところは同じです。この考え方に異論はありません。
しかし、実際問題、ひきこもりをどうやって解決していけばよいのか・・・?
解決方法はケースバイケース、という書籍ばかりでは先に進めません。
そのための具 体 的方法とまでは言いませんが、考え方だけでも提示して欲しかったです。
その、考え方という点では、私 自 身は答えを持っています。
【精神】に対するアドバイスだけでなく、【身体】に対するアドバイスも同時並行的に行う。これが答です。
私が過去に「医療法人せのがわ」において行った研究で分かっているのは、
スポーツでも、園芸でも、歌でも、五感をフルに使う活動は、精神障 害 者のリハビリとして効果が非常に大きい、ということです。その理由をひとことで言えば、
【身体】が柔らかくなると、【精神】も柔らかくなる。
となります。
もちろん、ひきこもりの人にムリヤリ身体運動をさせては逆 効 果なので、
どのように無理なく、自然に、自分の【身体】を感じてもらうようにするか・・・
これを科 学 的客観的に明確にしていくのが、私たちの今の大きな研究課題となっています。
次回は、関連の論文の紹介をする予定です。