大学教員にも好戦的な性 格の人は多い。
たとえば、教 授 会や学会で行われる議論。
舌鋒鋭く論敵を追い詰めていくというシーンは、日 常 茶 飯 事だ。
誰かが会議の場で主 張を始めたとする。
そのとき、「ただ聞くだけ」 ということが、大学教員は苦手だ。
その主 張に賛成したいときは、役に立つこと、その人が喜ぶことを言おうとし、
反 対したいときは、どう質問し、どうアドバイスするか、頭を働かせながら聞いている。
こんな緊張感の中では、心を開いた話はできない。
本音や愚痴は言えないし、キャッチボール(対話)が始まっても、すぐに途切れてしまう。
さて、どうする?
中途半端な工夫ではダメ。もう、発想を逆転するしかない。
以下に、その工夫として7つほど挙げてみる。
① まず、聞くとき。とにかく聞くに徹する。
② 話している人の考えを無条件で受容し、口を挟まない。
③ 聞く内 容で相手を評 価しない。話の内容をそのまま理解する。
④ 議論、説得、尋問、アドバイスなどはしない。
⑤ 平等で自由な空気を作り、同意しない自由を全員に与える。
⑥ 何も決まらなければ、そのことを確認するだけにする。
⑦ 異なる視点で意見交換し、異なる理解を繋ぎ合わせて共有する。
こういう 「自 然 体」 で心を開いた対 話を続けて初めて、無理のないポジティブな変化が起こるのだ。
しかし、この①~⑦。残念ながら、私の周囲では1つも達成できていない。
でも、その気になれば、どれもできることばかりだ。
大学に限らない。小 学 校・中 学 校・高校・家庭・職場・・・そのどこでも、この工夫を取り入れ、
上下関係のない空間を作りさえすれば、皆が良く話し合えるようになる。
困難に直面したら、関わる人たちが集まって対 話を続ける。
もっと組織を元気にしたいなら、まず、共有できる場 所を作る。
そして、感 情を素直に表出しながら、言葉を交わせるような雰 囲 気を作る。
このような 「身 体的反応」 を大切にすることが、ひきこもり支援の際にも大きな意味を持つと考える。
もう、お気づきの方もおられるだろう。
ここあげた7つの工夫はすべて、オープンダイアローグの基 本 的な考え方だ。
参 考にさせて頂いた書籍を挙げておく。
「オープンダイアローグとは何か」 齋藤 環. 医学書院. 2015年5月.
「やってみたくなるオープンダイアローグ」 齋藤 環. 医学書院. 2021年3月.
「感じるオープンダイアローグ」 森川すいめい. 講談社現代新書. 2021年4月.
「オープンダイアローグ 私たちはこうしている」 森川すいめい. 医学書院. 2021年7月.
と、ここまで書いたところで、この原稿を読んでいたゼミの学生が、口を挟んできた。
学生 : この間、テニス学会のお手 伝いをさせてもらいましたけど、先生も発表者にけっこうきつい
質問してましたよね。
友末 : あ~確かに。でも、あれくらい大したことない。
学生 : で、先生も発表したとき、色々意見されてましたけど、先生ってタヌキですね。
友末 : タヌキ? なんじゃそれ?
学生 : 都合悪いこと言われると、とぼけるか、笑ってごまかすかで、討論になってなかったですよ。
友末 : なるほど。じゃけ、タヌキか…
学生 : でも、先生の方が上手 (うわて) だな、と思いました。さすがです~
友末 : わっはっはっは~~~!
学生 : ほら、また笑ってごまかす・・・
