プロ野球で行われる引退試合。
打者ならば1打席だけ立ち、投手なら打者1 人に対してだけ投げ、
最後の声 援を受けて引退する、というセレモニーです
普通は、チームの順位に関係ない消化試合や、点差が開いたときに行われ、
相手チームも引退する選手に花を持たせます。
しかし、引退試合とは言え公式戦ですから、そうでない場 合もあるから面白い。
私が印象に残っているのは、次の3人のケースです。
1 人目は、前広島監督の佐々岡真司氏。2007年、相手は横浜、打者は村田修一。
広島が大量リードの場面でしたが、村田にホームラン王のタイトルがかかっていたため真 剣勝負。結果、ホームランを打たれたのですが、これはこれで良い引退試合だったと思います。
2 人目は、現在のカープのコーチ、高橋建氏。2010年、相手は横浜、打者はカスティーヨ。
この試合は、TVで見ていたのですが、TVの音声を消し、ラジオの音声で聞いていました。
ラジオの安仁屋さんの解説を、思い出しながら再現してみます。
「えっ? 外人か~? こりゃ~注意せんと。打って来るかも知れませんよ。大リーグには引退試合というセレモニーはありませんからね」
いやホント、大 丈 夫かな? と私も心配して見ていましたが・・・
1球目。外角にストレート。ちょっと外れたかなと思ったら、審判は「ストライク!」。
2球目。投げた直後に「やばっ!」と思うような、ど真ん中のストレート。
しかし、カスティーヨは微動だにせず、ノーボール・2ストライク。
そして3球目。またど真ん中だが、カスティーヨはボール3~4個分上を大空振り。
その瞬間、アナウンサーが叫びました。「高橋建! 引退登板を3球3振! 立派です!」
安仁屋さんはというと「ふふん」と笑い、「カスティーヨは分かってましたね。彼も立派ですよ」と一言。こんな楽しいやり取りが聞けるのも、引退試合の醍醐味です。
3人目は、これも現コーチの永川勝浩氏。2019年、相手は中日、打者は大島洋平。
永川選手の娘さんをよく知っていたので、バックネット裏の席を確保しました。
先発で1 人だけ投げるということで、ガチガチの真 剣勝負。
すべて直球で一塁ゴロに打ち取ったのですが、その危なかったこと!
守備がそんなに上手いわけではない一塁の松山が、転げそうになりながらもショートバウンドで良く取り、一塁に駆け込んだ永川にトスしてギリギリアウト。
「永川さん、最後に仕事した~!」って感じでした。
大歓声に包まれ、べンチに戻ろうとしていたとき、中日の選手が出て来て花束を渡したシーンは、瞼に焼き付いています。
実はこの日、もっと印象に残ったことがあります。それは、娘のゆなさんの始球式。
背が高いしバレーの選手なので腕が大きく回り、糸を引くような速い球が行ったのです。
その瞬間「オーーーッ!」とどよめきが上がり、球場全 体が震えました。
永川選手は直後に娘からボールを手渡されたとき、「泣きそうになった」とのことですが、そこはプロ。
気 持ちもすぐに切り替え、打ち取るんだという、いつものオーラを発していました。
この試合に限らず、引退試合はいつ見ても感 動ものだと思います。
さて、ひきこもり支援に観 戦体験というのがあるのをご存 知でしょうか?
スポーツを観 戦してもらうことをきっかけに、自分の世界を広げてもらうことができたら、という考えのもと、サッカー(Jリーグ)ではすでに行っているクラブも有ります。
ただ観 戦をするだけでなく、選手が使うロッカールームや普段入ることができない施設も見学できたり、たいへん好評のようです。
これを、プロ野球やプロバスケットなど、他の競技でも始めることはできませんかね?
ひきこもりの人がこうしたイベントに参加するのは難しい面があることはよく分かっていますが、プロ野球だったら引退試合がお勧めです。
感 動的だし、試合後には楽しいセレモニーもあるので、これに引っ張り出すことができれば、心を開く大きなきっかけが得られるかも知れません。
昨年は、一岡投手の引退試合もありました。始球式での息子さんの投球には、ファンはもちろん、両軍ベンチからも大拍手!
デイリースポーツ online (2023.10.01)より
https://www.daily.co.jp/baseball/carp/2023/10/01/0016871251.shtml?ph=1