「女性（じょせい）の会話（かいわ）様式（ようしき）」

「あの服、可愛くない?」「最近（さいきん）、私（わたし）たち会話（かいわ）が少（すく）なくなって来（き）たんじゃない?」
女性（じょせい）は言葉（ことば）の最後（さいご）に「～じゃない?」「～だと思（おも）わない?」など、疑問（ぎもん）形をよく使（つか）う。
しかし男性（だんせい）諸君、この言（い）い方を単なる疑問（ぎもん）文として捉（とら）えてはいけない。
女性（じょせい）は、相手（あいて）に問（と）いかけながら隠れた意見（いけん）を主張（しゅちょう）するという、少（すこ）し複雑な会話（かいわ）術を使（つか）うのだ。
これをタッグ・クエスチョンと呼ぶ。

先（さき）にあげた「あの服、可愛くない?」 これは相手（あいて）に可愛いかどうか尋ねているのではない。
「あの服は可愛い」と、ほぼ100%肯定している。もし両親の前でそう言（い）ったとしたら、
お母（かあ）さんは女同士（どうし）「あの服を買って欲（ほ）しいんだな」と娘の本心を読（よ）み取（と）る。
一方（いっぽう）、お父（とう）さんはというと「あぁ?」「ふーん」と生返事（へんじ）をするくらいだろう。

奥さんが旦那さんに「最近（さいきん）、私（わたし）たち会話（かいわ）が少（すく）なくなって来（き）たんじゃない?」と言（い）ったとする。
この問（と）いかけの裏には「会話（かいわ）が少（すく）なくなってきたから、結婚（けっこん）したときみたいに増（ふ）やしたい」という主張（しゅちょう）が隠されている。しかし、旦那にはそれが伝わらない。
「いや、そうでもないよ～」という答（こた）えが返ってきたら良（よ）い方で、
「はっきり言（い）ってくれんと分（わ）からん!」と険悪な雰囲気（ふんいき）で言（い）い返（かえ）されるかも知（し）れない。
奥さんにしてみれば「ごめんね。今度（こんど）から気（き）を付（づ）けるよ」と言（い）って欲（ほ）しいのに･･･である。

ではなぜ、女性（じょせい）はタッグ・クエスチョンを頻繁に使（つか）うようになるのか。
その最（もっと）も大（おお）きな理由（りゆう）が、同調意識（いしき）だ。
女性（じょせい）は周（まわ）りとは常に共感（きょうかん）していたいという感覚（かんかく）を持（も）っており、それが会話（かいわ）にも影響（えいきょう）して、
自分（じぶん）の主張（しゅちょう）が相手（あいて）に拒まれるのをできるだけ避けようとする。

先（さき）の例に戻ろう。
「あの服、可愛い」と断定してしまうと「いや、可愛くない」と否定される恐れがある。
ところが「可愛くない?」と言（い）い方だとどうだろう?
たとえ「可愛くない」と返（かえ）されたとしても、自分（じぶん）の意見（いけん）が否定された感（かん）じはしない。

その点で、女性（じょせい）同士（どうし）は不可思議な会話（かいわ）をする。
「可愛くない?」と聞（き）かれたとき、聞（き）かれた方にも同調意識（いしき）があるので、
「あんまり、可愛くない」と思（おも）ったとしても「うん、可愛い」と相槌を打（う）ってしまうのだ。

その点、男性（だんせい）は全（まった）く違っている。
男性（だんせい）の会話（かいわ）には攻撃性、つまり相手（あいて）と張り合（あ）う対抗意識（いしき）というものが働（はたら）くので、
自分（じぶん）の意見（いけん）と違（ちが）うことには、はっきりと反対（はんたい）する。

「おい、あの服カッコいいぞぉ」
「何言（い）ってんだ、こっちのほうがカッコいいに決（き）まってるだろ」
「バカ! お前（まえ）センスない。この服は、※▼#◇・・・」
というように、グチャグチャになったりする。

日本（にほん）の女性（じょせい）がタッグ・クエスチョンをよく使（つか）う理由（りゆう）には、歴史的・社 会 的 要 因（しゃかいてきよういん）もある。
昔（むかし）の日本（にほん）では、女性（じょせい）は謙虚というのが当（あ）たり前（まえ）であり、
それがもとで、自己（じこ）主張（しゅちょう）しない言（い）い方をするようになった、ということだ。
最近（さいきん）は、女性（じょせい）が社会（しゃかい）に進出（だ）するようになっているので、
タッグ・クエスチョンを使（つか）う女性（じょせい）は、だんだんと減（へ）っていくかも知（し）れない。

さて、この女性（じょせい）の会話（かいわ）の特徴（とくちょう）である同調性・共感（きょうかん）性という部分（ぶぶん）。
ひきこもっている人（ひと）とコミュニケーションをとる際（さい）に、大いに役立（やくた）つ。
たとえば、子（こ）どもが「学校（がっこう）に行（い）きたくない」と言（い）ったとする。
そんなとき「なに言（い）ってるの!早（はや）くしなさい!」と叱りつけるのではなく、
「学校（がっこう）に行（い）きたくないのね」と女性（じょせい）の会話（かいわ）でよくあるオウム返（かえ）しをするのだ。

登校（とうこう）拒否児の言葉（ことば）をすぐ否定するのではなく、まずはオウム返（かえ）しで理解（りかい）する。
具 体 的（ぐたいてき）なアドバイスをするのは「不安（ふあん）や苦（くる）しみが減（へ）ってきたかな」「自分（じぶん）を味方だと感（かん）じてくれているな」と、ほんの少（すこ）しでも感（かん）じられるときが来（く）るまで待（ま）つ。
信頼（しんらい）関係（かんけい）は、根気（こんき）よく話を聞（き）き続（つづ）けているうちに自然（しぜん）に醸成されていく、という面があるからだ。

さて、世（よ）の中（なか）には、共感（きょうかん）的な話が全（まった）くできない人（ひと）たちがいる。
というか、意図的（てき）にすれ違（ちが）いを生（しょう）じさせるような言（い）い方を、好んで用（もち）いるのだ。
誰（だれ）かって･･･? そう、政治家（せいじか）!
以下（いか）に、相手（あいて）をはぐらかせるための政界用語と、その真の意味（いみ）をあげておく。
関東のどっかの大学（だいがく）の理事（りじ）長もよく使（つか）う。

〇お答（こた）えを差し控える → 事実（じじつ）だけど、言（い）いたくない。
〇記憶（きおく）にない → その通（とお）りだ。
〇前向（まえむ）きに → 明（あか）るい見通（とお）しはないが、希望（きぼう）を持（も）たせておこう。
〇丁寧（ていねい）に → ふだんは丁寧（ていねい）でない。
〇真剣（しんけん）に → 自分（じぶん）の主張（しゅちょう）を印象（いんしょう）付（づ）けたい。
〇見守（まも）る → 人（ひと）にやらせて、自分（じぶん）は何（なに）もしない。
〇検討する → 検討するだけで、実際（さい）には何（なに）もしない。