「ボクシングから見（み）えて来（く）るもの」

このコラムの執筆者の一 人（ひとり）、中 広（）大 悟（）さんは皆（みな）さんご存 知（ぞんじ）のように、元プロボクサーです。

出 身（しゅっしん）は三 次 市（みよしし）で、皆実（みなみ）高校（こうこう）の時（とき）にはサッカーをされており、ボクシングを始（はじ）めたのは、

広島（ひろしま）経済大学（だいがく）に進学（しんがく）されてからだそうです。

その後、なんと大 学 院（だいがくいん）にも進まれ、博士（はかせ）課程（かてい）も修了（しゅうりょう）されており、

「異色の」と言（い）うか、あるいは「変（か）わり種」と申（もう）し上（あ）げたら良（よ）いのか、

まあ、少（すこ）し変（か）わったプロボクサーだったことは間違（ちが）いありません。

でも、凄まじく強（つよ）いボクサーだったことも、間違（ちが）いないです。

実 際（じっさい）、日本（にほん）スーパーフライ級王座を3度も防衛されました。

試合（しあい）をリングサイドで見たことがあるのですが、「動（うご）きに全然ムダが無（な）い」というのが第（だい）1印象（いんしょう）で、「相手（あいて）のパンチは中 広（）君には当たらん」と思（おも）ったのを覚（おぼ）えています。

2005年（ねん）、当 時（とうじ）の日本（にほん）フライ級チャンピオン内藤大助選手（せんしゅ）(のちの世界（せかい）フライ級王者)との試合（しあい）も印象（いんしょう）的でした。激戦の末2-1の判定（はんてい）で中 広（）君が敗れたのですが、この映像（えいぞう）を何回（なんかい）見返（かえ）しても、中 広（）君の勝ちのように私（わたし）には見（み）えます。

内藤選手（せんしゅ）が当 時（とうじ）の世界（せかい）チャンピオンに何 度（なんど）も挑戦（ちょうせん）したり、日本（にほん）タイトルを防衛中（なか）で将来（しょうらい）を期待（きたい）されていた、そういうことが判定（はんてい）に表れたとしか思（おも）えませんでした。

でも、こんなことで怒っちゃいけないんですね。

スポーツで理不尽な目に遭うのは当（あ）たり前（まえ）、と余裕（よゆう）で対処（たいしょ）したいところです。

でないと、日常（にちじょう）の生活（せいかつ）がやってられなくなります。ひきこもりたくなります。

だって、世の中（なか）、理不尽なこと、予期せぬことが、続（つづ）けざまに起（お）こるわけですから・・・

スポーツに打（う）ち込（こ）んだ人なら、普段（ふだん）の生活（せいかつ）や仕事（しごと）で納 得（なっとく）いかないことが起きたとしても、

「まあ、そんなもんじゃろ? 今うまく行（い）かんでも、あとあと生（い）きることはいくらでもある」と切（き）り替（か）えられるでしょう。中 広（）君の明（あか）るさからは、そんな懐の広さが感（かん）じられます。

さて、冒頭の「ボクシングから見（み）えて来（く）るもの」は、中 広（）君が現役（げんえき）のとき、

安田（やすだ）女子（じょし）大学（だいがく）で講演（こうえん）をして頂（いただ）いたときのテーマです。

何（なに）か一（ひと）つのことに打（う）ち込むということの重要（じゅうよう）性にについて、中 広（）君の豊富（ほうふ）な体験（たいけん）に基（もと）づくお話（はなし）をしていただき、学生（がくせい）にとって大 変（たいへん）インパクトのある内 容（ないよう）だったのを覚（おぼ）えています。

私（わたし）はこの講 演 会（こうえんかい）で司会をしたので、中 広（）君にはいくつか質問（しつもん）をさせて頂（いただ）きました。

友末:ボクシングで勝つ秘 訣（ひけつ）って何（なん）ですか?

中 広（）:気 持（きも）ちですね。絶対（ぜったい）に勝つ!という強（つよ）い気 持（きも）ちを持（も）っている方（かた）が勝ちます。

友末:中 広（）君のボクシングの欠点は何（なん）ですか?

中 広（）:ここ!というときにもっと突進してもいいと思（おも）うのですが、そういう勢（いきお）いの強弱の使（つか）い分（わ）けが少（すこ）し足（た）りないかな、と。

友末:でも、スポーツ、特（とく）に格闘技の場 合（ばあい）、欠点は裏を返せば長所（ところ）にもなりますよね。

中 広（）:そうですね。僕 自 身（ぼくじしん）、その欠点は逆（ぎゃく）に試合（しあい）で生（い）かせる、と捉（とら）えています。

友末:中 広（）君がフライ級チャンピオンだったときと今とでは、どっちが強（つよ）いですか?

中 広（）:う～ん、難（むずか）しいですね。チャンピオンのときは、若さという勢（いきお）いがありましたが、

今（いま）はそこまでの勢（いきお）いはなくても、考（かんが）えの幅（はば）が広（ひろ）くなったような気（き）がします。

友末:バンタム級の亀田興毅選手（せんしゅ）をどう思（おも）いますか?

中 広（）:いい選手（て）ですよ。でも、尊敬しているかと言（い）われると～～

友末:わかりました(笑)。ボクシングというのは、相手（あいて）の攻撃に柔 軟（じゅうなん）に臨機応変に対処（たいしょ）することが求（もと）められるわけですが、女子（じょし）大 学 生（だいがくせい）を前にした講 演 会（こうえんかい）でも臨機応変に対応（たいおう）されますね。一（ひと）つのことに打（う）ち込むという経験（けいけん）は、他（ほか）の場（ば）面（めん）でも役立（た）てることができるんだということが、よくわかりました。

〈ウィキぺディア、ポンサレック・ウォンジョンカムより〉

WBC世界（せかい）フライ級チャンピオン、21度（ど）王座を防衛したポンサクレック・ウォンジョン

カム。この選手（せんしゅ）は強かった! グローブの中（なか）に石が詰まっているんじゃないか、と思（おも）わせる

ようなパンチの強（つよ）い選手（て）でした。2006年（ねん）、中 広（）君が日本（にほん）スーパーフライ級王者のときに、

タイに乗（の）り込（こ）んで挑戦（ちょうせん）しました。1ラウンドにウォンジョンカムの猛攻を受（う）け大流血し、ダ

ウンを奪われましたが、その後（あと）は持（も）ち直して判定（はんてい）に持（も）ち込（こ）みましたが敗退。この試合（しあい）は負け

たとはいえ、中 広（）君の凄みが出（で）た良（よ）い試合（しあい）でした。

中 広（）大 悟（）君、ボクサー、世界（せかい）ランキング最 高（さいこう）3位。