首の後ろ側の深い所に、頭を真っ直ぐに保つ筋肉(板状筋)があります。
立っているとき、座っているとき、歩いているとき、ずーっと働いているという、
ご苦労な筋肉です。この筋肉はスポーツの場面でも重要な役割を果たし、
跳ぶ・走る・投げる・打つときに、姿勢が崩れないよう力を発揮しています。
しかし、ここで困ることが起きます。
筋肉は力を出し続けていると、不 必 要な力まで出てくる。
プロレベルの選手でも、そう。
「力んでしまった」と反省しているのを聞くことがありますが、
余 計な力が他の部位にも転移したら最後。身 体 全 体の動きが不 自 然になります。
板状筋は、その余 計な力が出やすい筋肉の一つです。
これは、日常生活でもそうなのですが、
「あ、いま板状筋にムダな力が入っている」と気付くのは難しいでしょう。
もし、長い間気 付かなかったりすると、
疲労が生じる → 作業の効率が悪くなる → さらに疲労が蓄積する
という負のサイクルにはまり込む恐れがあります。
では、どうすればよいのか?
簡単です。板状筋の出す筋 力を、必 要最小限に留めるのが良い。
といっても、力が少なすぎると猫背になり、肩や背 中に負担が生じるので、
「頭が軽く前傾する程度に首をゆるめておく」というくらいが、ちょうど良い。
このことをプロのピッチャーを例に説明してみます。
板状筋に無 駄な力が入らないピッチャー。誰だと思いますか。
力が入らない順に1位から3位まで挙げるとすると、1位は大リーグに行ったダルビッシュ。2位はこれも大リーグに行った前田健太。そして、3位はカープの選手をえこひいきして、森下選手です。
ダルビッシュは、ボールリリース直前、力みで頭が一瞬後ろに動くピッチャーが多い中で、1ミリも動かすことなく、ホームベースを真っ直ぐに見 据えたままボールを放っています。
マエケンの場 合は、少し前かがみになって両腕をぐるぐる回す「マエケン体操」に注目。
この体操は、肩や首の筋肉をまとめて柔らかくできるというスグレモノなのですが、
板状筋をゆるめることの重要性を、彼は感覚的・本 能 的に知っているようです。
そして、森下選手。若いのに凄いですよ。
先発完投型のピッチャーは、いつも全 力で投げているわけではありません。
ここが大事だ!というときにギアを上げ、より速く、より重く、より切れのあるボールで打ち取ろうとします。
しかし、そのときにギアを上げすぎてはいけないんですね。
板状筋にムダな力が入り、顔が動く分コントロールは悪くなるし、
思い切り投げてもボールは伸びていきません。
これはよくあることなのですが、逆に緊急事態でもムダな力が全く出てこないのが、
森下選手なのです。
では次に、皆さんの身 近で板状筋に力が入っていない人、誰かいますか?
実は・・・生まれたばかりの赤ちゃんなので~す。
4ヶ 月くらいまでは、頭でっかちの割に首回りの力が弱く、
頭を前後左右にふらふらさせていますが、この動作に注目。
なぜなら、このふらふらした動きが、ムダな力を取り除いていくからです。
スマホをやっているとき、ゲームをしているとき。
赤ちゃんのゆるんだ動きをイメージしながら、首の力を抜いてみてください。
首の周囲をぶるぶるぶると小 刻みに動かしていると、
筋肉のコリや力みが取れたような感じがするときがあります。
ほんの一瞬でもそう感じたとしたら、あなたは板状筋をゆるめるコツをつかんだのです。
そのゆるみは心にも好影響を及ぼし、精 神 的な負担も減っていきます。
そして、そこに笑いが生じたらしめたもの。
板状筋はもちろん、身 体も精神も、自 然で力みのない状態になっているはずです。
ひきこもっている人に「もっと真面目に、真 剣な表情で聞くように」
「姿勢を正そう。まっすぐに前を向こう。そうすると気 持ちも前 向きになるから」
などとアドバイスするのはよろしくない。板状筋の緊張を引き起こします。
アドバイスの際には、身 体と精神には密接なつながりがある。このことを忘れないようにしましょう。