外傷性ひきこもり・・・これは、精 神 科 医の宮田量治先生が書かれた本の題名です。
レヴューには「素人にも読みやすい本」と書かれていますが、けっこう難しいです。
ひきこもりの原因と対策を学問的・専 門 的に捉えようとしているので、
精 神 医 学の予備知識がないと、理解しづらい部分が多くあるように感じます。
しかし、これは、中 々興味深い視点から書かれている本なので、
著 者が最も主 張したい点を、分かりやすく書き直しておくことにします。
結 論はただ一つ。「外傷性引きこもりは、親のしつけと関連している」です。
以下、重要なポイントを箇条書きにすると・・・
★どこの家庭でも起こり得る不適切なしつけが、知らず知らずのうちに子どもの心にトラウマ(精 神 的外傷)を作る。本 人や学 校や社会のせいではない。
★しかしながら、トラウマの形成には、経験・遺伝・環境など様 々な要因が複雑に関与しており、親だけの責 任とも言い切れない。
★トラウマによって生まれる思考や行動は、記 憶に縛られた思考・行動と言い換えることができる。したがって、変えようとすれば変えられる『外傷性』の症状にすぎない。
★ひきこもりになったことを自分の弱さと捉えたり、自分を責めたり、回 復をあきらめたりする必 要は全くない。自分なりの回 復を目 指そうとする力は、必ず生まれて来る。
では、そのつらい状況からの回 復には、どうすれば良いのか?
ここが、最も知りたいところなのですが、300ページ近くの本にしては、
少ししか触れてありませんでした。
著 者は、まず、次のように控え目に述べます。
「学 校に行かなくてよい。仕事もしなくてよい。まずは、ケアや治療が必 要だ。
一 人で考え込まず、恥ずかしがらず、自分のできる方 法で、家の外のだれかと繋がろう。
そして、いま住んでいる地域の情報を集めてみよう。そうすると、相談や回 復支援のセンターのようなものが見つかるかも知れません・・・」と。
(広島でしたら、この「ハルモニ@ホーム」ですね!)
そして、具 体 的な活動としては、ヨガ、運 動、祈り、気晴らし、早寝早起き・・・などが、
さらっと挙げてあげてあるだけなのですが、それは仕 方がありません。
日本には治癒例としてのデータが、蓄積されていないからです。
そもそも、こういう日本特有の問題の解決方 法を、精 神 科 医だけに求めてはいけません。
宮田先生は、精 神 科 医として貴重な知見を提 示してくださったわけですから、
後は我々が自分で考え、試 行 錯 誤もしながら、答を捜して行けばよいのです。
これは、ひきこもりの研 究に限ることではありません。
新しい分 野の研 究が始まったときには、答が詳しく示されていないから不満・・・
ではなく、逆に面白い・・・
そういう姿勢で進んで行くことが、新分 野の発展につながっていくのです。
外傷性ひきこもり。星和書 店。