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 Dr.友末のゼミ風景ふうけいよみもの

コラムだい45かい Dr.友末のゼミ風景ふうけい科 学 的かがくてき根拠こんきょ子 育こそだて・・・?」

教育きょういく経 済 学 者けいざいがくしゃ、中室牧子さんの 『学力がくりょく経 済 学けいざいがく (2015ねん)』 は、日 本にほん教 育 界きょういくかい衝撃しょうげきあたえた。

これまで、経 験 論けいけんろんでしかかたられてこなかった教育きょういく理論りろん科学かがく導 入どうにゅうし、

教育きょういくのあるべき姿すがたせまろうとしたからだ。

昨年さくねんはこの続編ぞくへんとして、 『科 学 的かがくてき根拠こんきょ子 育こそだて(2024ねん)』 が発刊はっかんされた。

近々ちかぢか中室さんの講 演 会こうえんかい参加さんかするということもあり、んでかんがえたことをまとめてみた。

 

まず、幼児ようじ教育きょういく大切たいせつさ、非 認 知 能 力 養 成ひにんちのうりょくようせい重 要 性じゅうようせいを、エビデンスにもとづいてべていた部分ぶぶん

説得力せっとくりょくがあったし、私 自 身わたしじしん女 子 大じょしだいながつとめている関 係 上かんけいじょう

教育きょういく効果こうか男 女 差だんじょさについてれてあったところは、おおいに参 考さんこうになった。

(*非 認 知 能 力ひにんちのうりょく学 力がくりょくでははかることのできない社 会 性しゃかいせい責 任せきにん感・リーダーシップ )

 

そして・・・

① PCは習 熟 度 別しゅうじゅくどべつ指導しどうをするという観 点かんてんもちいれば効果こうかがある

(そうでないと学 力がくりょく低下ていかさせる場 合ばあいもある)

② スポーツやリーダーの経験けいけん学力がくりょく非 認 知 能 力ひにんちのうりょく向 上こうじょうさせる

という部分ぶぶん教員きょういん親御おやごさんだけでなく、小 中 高しょうちゅうこう、そして大 学 生だいがくせいにも役 立やくだ情報じょうほう満載まんさいだ。

さすが経 済 学 者けいざいがくしゃ。これは教 育 学 者きょういくがくしゃにはとてもけない。

 

ただ、科学かがく教育きょういく融合ゆうごうというこれまでだれけなかったみ。

2冊目さつめとなると、若 干じゃっかんインパクトがよわまってきたようなかんじがした。

本 人ほんにんも 「科学かがく決 定 版けっていばんではなく補 助 線ほじょせん」 とべておられるし、

結局けっきょくひとひと教育きょういくする」 という一昔前ひとむかしまえ主 張しゅちょうもどってしまったのでは、

このさきどういうエビデンスをかさねてけばいのかが、えてこない。

 

そういう意味いみでは、2冊目さつめの 『科 学 的かがくてき根拠こんきょで・・・』 は、ちょっと意 地 悪いじわるかたになるが、

本書ほんしょ主 張しゅちょうぎゃくのことをタイトルにしている、という見方みかたもできる。

 

批判ひはんをしているのではない。ぎゃくだ。

これから教 育 界きょういくかいはどういう研 究けんきゅうみ、政府せいふはどういう政策せいさくれてけばいのか・・・その出発点しゅっぱつてん部分ぶぶん明 確めいかくになったと、ととらえるべきだろう。

 

では、具 体 的ぐたいてきなにからはじめてけばいのか?

じつは、れいがある。それは・・・スポーツの世界せかいだ。

 

いまから半世紀前はんせいきまえ経験けいけんとカンの世界せかいだったスポーツに科学かがく導 入どうにゅうしようという機運きうん芽 生めばえた。

教育きょういく科学かがく導 入どうにゅうしたのが10年 前ねんまえの中室さんがはじめてとすると、

それより40年 前ねんまえに、スポーツかいおなじようなことがこっていたのだ。

Bridge the Gap! (研 究 室けんきゅうしつ現場げんばのGapをめる) という標語ひょうごが流行し、

競 技 力 向 上きょうぎりょくこうじょう直接ちょくせつ役 立やくだ研 究けんきゅうをすることを最優先ゆうせん事項とする学会がっかい設立せつりつされた。

 

その結果けっか経験けいけんもとづく指導しどう方 法ほうほうなかにある誤りが正され、

より効率こうりつ指導しどう方 法ほうほう提 示ていじされるようになり、

いま科学かがく利用りようせずして世界せかいでトップ選手せんしゅになることは不 可 能ふかのう・・・とわれる時 代じだいになった。

 

しかし、ここで押さえておかなくてはならないことがある。

それは、優れた指 導 者しどうしゃ科学かがくを重宝し、勉強べんきょうもよくするが、科学かがくを全面てき信頼しんらいしているわけではない、というてんだ。科 学 的かがくてきデータはあくまで参 考さんこう資料なのだ。

 

なぜか? そのもっとおおきな理由りゆうは、人間にんげんの 『心 身 相 関しんしんそうかん』 という複雑な性質がおおきくかかわってる。

スポーツ選手せんしゅ指導しどうするさいには、「心」 「技」 「体」 全般ぜんぱんはたらきかけがおこなわれるが、

この3要素ようそすべてに科 学 的かがくてきデータがそろっていたとしても、

どこに重きを置き、どういう順で、そしてどのくらいの期間きかん指導しどうするのがいのか?

こういう問題もんだいになると、指 導 者しどうしゃ経験けいけんとカンが物を世界せかいになる。AIではできない。

 

もし今ここに、大事だいじ場 面ばめん緊張きんちょうし、日 頃ひごろの力が発揮はっきできない選手せんしゅがいたとしよう。

 「心」 のトレーニングをさせようとおもうかもしれないが、なかなか効果こうかが上がるものではない。

そんなときは 「体」 をやわらかくする方 法ほうほうさきおぼえさせるのだが、

それをいつおこなうかは、選手せんしゅれる素地があるかどうかを、見 極みきわめながらめていく。

 

身 体しんたい」 がやわらかくなれば 「精神せいしん」 もやわらかくなる。

そして、心 身しんしんとも余裕よゆうしょうじ、自 然しぜん状態じょうたいでプレーができるようなる。

この 『心 身 相 関しんしんそうかん』 という原則げんそくは、スポーツに限ることではない。

不 登 校ふとうこうやひきこもりの指導しどう、そして日常にちじょう生活せいかつのすべての場 面ばめんで、わすれてはならないことだ。

 

となると、学力がくりょく非 認 知 能 力ひにんちのうりょく向 上こうじょうさせようというとき、

「心」 だけでなく、「身」 にたいするはたらきかけも同 時どうじおこなうべき・・・ということにならないか。

ここに、「心」 にしか焦点しょうてんて て来なかった経 済 学けいざいがく心 理 学しんりがく教 育 経 済 学きょういくけいざいがく限 界げんかいえるのだ。

 

批判ひはんしているのではない。発展する可 能 性かのうせいがこのさき無限にある分 野ぶんや・・・とわたしとらえた。

実 際じっさい心 身 相 関しんしんそうかん』 という観 点かんてんでこの2冊のほんみ直してみると、

「身」 につながりそうな話があちこちにかくれている。

 

そのひとつだけ挙げるとすると、余力・余剰が必 要ひつよう・・・と主 張しゅちょうされていた部分ぶぶん

これは、 「心」 と 「身」 を同 時どうじやわらかくするためのコツであり、

心 身 相 関しんしんそうかん』 という話にダイレクトにつながってくる。

 

この本では、せっかくスポーツ経験けいけん重要じゅうよう性についてれたのであるから、

スポーツがなぜ非 認 知 能 力ひにんちのうりょくたかめるのか、「心」 と 「身」 の両面りょうめんからデータを収集しゅうしゅうしたら、

迫力のある話がおこなえるとおもう。

 

そして、教育きょういく現場げんばにおいて 「あるときは経験けいけんを、あるときは科学かがくを」 というように、

広い視野しやの元にその使つかけができるようになるだけでなく、

不 登 校ふとうこう・ひきこもり支援しえんにも役 立やくだすごい本が出来上がりそうながする。 たのしみ・・・

と、ここまでいたところで、今回こんかい講演こうえん、「質疑応答がない」 ということが判 明はんめいした。

 

ごろから、演者とのやりりのない講 演 会こうえんかいなど意味いみない! とおもっているわたしは、

たいへん拍子けしてしまったのだが、これは正解かもれない、とおもい直した。

実をうとこの2冊の本、追及されたらこまるような記述が、いたところられるのだ。

 

そのいくつかを、ここで紹介しょうかいすることはできるが、

欠点を指摘し、攻撃するというのは、わたし趣味しゅみじゃない。

( ジュニアのスポーツ指導しどう絶対ぜったいにやってはいけないことである。)

問題もんだいはあってもいい。長 所ちょうしょけよう。中室シリーズだい3弾は期待きたいできる・・・とわたしかんがえたので、このコラムの文章ぶんしょうはこのままにしておく。